院長の小道が仙台で行われた “日本歯科保存学会 2024年度春季学術大会(第160回)に参加しました。
〈院長コメント〉
仙台で行われた日本歯科保存学会 2024年度春季学術大会(第160回)に参加してきました。今回の学会のメインテーマは「保存治療から最先端治療への挑戦」で、口腔健康と全身健康の関連性に焦点を当てたものでした。大会長挨拶でも述べられていましたが、国民皆歯科検診の報道依頼、歯科治療への注目が高まっており、同時に歯科医師として果たすべき役割も大きくなっていると感じております。今回の学術大会では、最先端治療をキーワードとしていたので情報収集も兼ねて参加させていただきました。
私が拝聴した中で最も印象に残っているのは「シンポジウム1(臨床セッション)」でした。このシンポジウムのテーマは「新たな展望:保存歯科臨床の到達点と未来への挑戦」で、その名の通り現在の保存歯科の現状と今後の展望を述べているシンポジウムでした。演者の先生は3人いて、まず田中 利典 先生(川勝歯科医院)が「エビデンスと歯内療法」について話されました。このセッションでは、この20年における歯内療法の分野での器具や材料の発展や、患者さんの「歯を残したい」という意識の変化を踏まえたうえで “歯髄保存療法” と “根管洗浄剤の撹拌” という2つのトピックスについて臨床的な視点で考察されました。”歯髄保存療法” に関しては、ここ数年で材料の進歩や考え方の変遷により一般的になりつつある治療法です。私も日常臨床でよく行う治療ですが、治療に対する考え方や術前説明の重要性など、改めて手技以外にも気をつける点が多い治療法だと認識しました。“根管洗浄剤の撹拌” については、近年根管洗浄において期待が高まっているレーザーについて、実際の症例を交えながら今後の根管洗浄の方向性について聞くことができました。歯内療法において、根管形成や根管充填の講演はよく聞きますが、根管洗浄についてここまで掘り下げて話を聞けることはなかなかないので非常にいい機会になりました。
次に、芝 多佳彦 先生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野・助教)が「歯周炎とインプラント周囲炎の併発に対する治療戦略―治療フローチャートと細菌叢解析の観点からー」についてお話されました。インプラントは非常に優秀な欠損補綴に対する治療法ですが、インプラントを打って終わりではなく、そこからのメンテンスが非常に重要です。インプラントを打ったままメンテナンスをしていないと、インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎などの合併症が起こり、長期的な予後の妨げとなってしまいます。このセッションでは、インプラント歯周炎への新しいフローチャートと次世代シーケンサーを用いた細菌叢解析に基づいた、歯周炎およびインプラント歯周炎を伴う口腔内への治療戦略についての話があり、「最先端治療への挑戦」にぴったりな講演でした。
最後は、菅原 佳広 先生(月潟歯科クリニック/徳島大学非常勤講師)による「コンポジットレジン修復の到達点と今後の展望」についての話がありました。う蝕治療への第一選択としてコンポジットレジンが存在します。その歴史は古く、1960年代半ばから始まり、接着技術やコンポジットレジン自体の物性や色調などの様々な変遷を経て現在に至っています。時代とともに変化していく中で、コンポジットレジンの手技や適応症例が変わってきており、このセッションでは現在のコンポジットレジンの到達点についての考察がありました。コンポジットレジンによる治療は毎日の臨床で行わない日が無いほど一般的な治療ですが、各手技の意味や適応症など、考えるべき点は非常に多いと感じました。
今回の学会ではここに書かせていただいた以外の講演も可能な限り参加して情報収集を行いました。歯科の世界も日進月歩で、常に最新の情報を知っておくこと(日常臨床に使うかはまた別として。)が重要だと考えており、その意味で非常に有意義な学会となりました。明日からの臨床で、今回学んだことを少しでも活かせるよう精進します。