こんにちは。兵庫県西宮市にある西宮北口ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
みなさんは、お口の中に歯が何本生えていますか?歯の形や大きさ、色など他の人と違うと思ったことはありませんか?
人によってそれぞれお顔や体型が違うように、実は歯にもそれぞれに違いがあるのです。
今回は”歯の先天異常”についてお話ししていきたいと思います。
もくじ
はじめに
先天異常とは、出生前の段階で生じる身体的な異常のことをいいます。時間が経ってから明らかになったものについても、その原因が出生時からある場合には、先天異常となります。先天異常は、あらゆる臓器のあらゆる部分に生じる可能性があり、その症状や種類も様々です。先天異常は口腔領域でも起こりうることで、歯の数の異常、形態の異常、形成の異常など、様々なケースがあります。
もともと歯の形態には男女差もありますし、個人差もあります。しかしながら構造は決まっており、前歯や臼歯それぞれにある程度の決まった形があります。その決まった形から逸脱した場合、歯の異常といわれます。
原因
歯の異常の多くは、はっきりした原因は明らかになっていませんが、遺伝的要因や感染症、いくつかの環境的要因が先天異常の発生リスクを高くするといわれています。
具体的には以下のことが考えられます。
・遺伝
・歯の発育期における栄養障害
・外傷
・ホルモン異常
・感染性
・風疹の罹患
・母親の妊娠中の栄養障害 など
数の異常
歯の本数の異常は、病気ではなく形成異常のひとつです。歯には、初めに生えてくる「乳歯」と6歳〜12歳を目安に生え替わる「永久歯」とがありますが、一般的に乳歯は20本、永久歯は28本(親知らずを含めると32本)存在します。中にはこれより少なかったり、多かったりする場合があります。
①先天性欠如
歯の数が生まれつき足りないことを先天性欠如歯といいます。歯の元となる歯胚(しはい)が何らかの理由でつくられないことで起こります。
先天性欠如は、乳歯では乳側切歯によくみられ、永久歯では第三大臼歯(親知らず)、上顎側切歯、第二小臼歯、下顎中切歯によくみられます。ただし、親知らずが欠如することは珍しいことではないため、先天性欠如とはいいません。
歯の欠如は珍しくなく、多くの人にみられます。左右片側のみが欠如する場合、両側とも欠如する場合、複数歯にみられる場合など色々なケースがあります。
②過剰歯
過剰歯とは、通常より歯が多いことをいいます。原因ははっきりとは分かっていません。
上顎中切歯の間や上顎中切歯の外側、大臼歯の頬側、歯列の最後方によくみられます。過剰歯は顎の骨の中に埋まったまま生えてこないことも多く、普通の歯とは逆向きの過剰歯のこと逆性過剰歯といいます。
過剰歯は無症状であることがほとんどなので、歯科医院でレントゲン撮影した時に初めて見つかることもよくあります。
③癒合歯
文字通り、2本の歯が発育過程で癒合してしまい、1つの大きな歯となった場合を癒合歯といいます。歯胚がつくられる過程でくっついてしまい、そのまま完成してしまった歯です。歯の表面(エナメル質、セメント質)だけが繋がってる場合と、歯の内側(象牙質)から歯の神経(歯髄)までが繋がっている場合があります。癒合部分に汚れが溜まりやすく、虫歯に注意が必要です。
癒合歯は乳歯に多くみられ、後から生えてくる永久歯にも異常が生じることがあるため、歯科医師に診てもらうことをおすすめします。例えば乳歯2本が癒合している場合、後から生えてくる永久歯が1本しかなかったり、生え替わりがうまくいかず歯並びの乱れや噛み合わせのズレに影響したりすることがあります。
形の異常
歯が他と比べて異常に小さかったり大きかったり、また歯に大きな結節がつくられる場合にも何らかの異常が考えられます。
①矮小歯
通常の歯よりも小さく変形した歯を矮小歯といいます。形が円錐であれば円錐歯、円筒であれば円筒歯とも呼ばれます。上顎側切歯や第三大臼歯(親知らず)によくみられます。
歯が他より小さいため、歯と歯の間にすき間が生じやすく、すきっ歯のような見た目が気になる方が多いです。
②巨大歯
巨大歯とは、通常の歯よりも異常に大きい歯のことをいいます。永久歯の前歯によくみられ、歯が大きいために顎の大きさとのバランスが取れず、ガタガタの歯並びや出っ歯になる場合があります。
③カラベリー結節
上顎第一大臼歯や上顎第二乳臼歯の近心舌側咬頭の舌面によくみられ、第5咬頭とも呼ばれます。結節の部位によっては清掃がしにくいため、汚れが溜まりやすくなることで虫歯のリスクが高くなります。
④中心結節
稀に咬合面の中央につくられる結節です。主に下顎第二小臼歯に発生します。切歯に発生した場合には、切歯結節とも呼ばれます。
中心結節は咬合面にあるため、食事等で結節が破折して神経が露出してしまう危険性があります。特に結節が大きな場合、内部に歯髄が入り込んでいることが考えられるため、破折しないよう事前の処置が必要な場合もあります。
⑤エナメル滴
大臼歯の歯根部、歯頸部などに発生するエナメル質の塊をエナメル滴といいます。エナメル滴は、歯の発生の段階で形成されます。 下顎よりも上顎に、特に上顎第三大臼歯に多くみられます。エナメル滴の表面では周囲の組織と結合しないことから、歯周病の原因になる可能性もあります。
形成の異常
歯がうまく形成されずに生えてくることを、歯の形成不全と言います。形成不全には、形の異常や色の異常があります。病気・薬剤・遺伝などの全身的なことが原因の場合には、左右対称で多数の歯に現れることが多く、外傷・乳歯の虫歯など局所的な原因の場合にはその部分だけに異常が現れます。
形成不全は質的に歯が弱いことが多く、脆かったり、崩れやすかったり、知覚過敏や虫歯になりやすいため注意が必要です。
①エナメル質形成不全症
エナメル質形成不全症とは、歯の最表面にあるエナメル質が正常に形成されていない状態です。歯はエナメル質やセメント質、象牙質など様々な材質で形成されており、エナメル質は歯の表面を形成しています。 エナメル質は人体の中でも1番硬い材質ですが、それが上手に作られなかった歯はプラークが停滞しやすい環境となり、虫歯が進行しやすい状態になってしまいます。
②ターナーの歯
乳歯の虫歯が原因で、その後生えかわる永久歯に形成不全が起きてしまうことがあります。虫歯は放っておくと進行して根の先まで細菌感染してしまいますが、根の先の細菌が、その下にある永久歯に影響して発育不全を起こしてしまいます。症状としては、小さな白斑や、陥没、重度になると歯の根部にまで形成異常が及ぶ場合もあります。ターナーの歯を防ぐには、乳歯を虫歯にさせないこと、虫歯ができてしまった時に”生え替わるから”と放置せずにしっかり治療を行うことが重要です。
③ハッチンソンの歯
梅毒トレポネーマの母子感染による影響で、子の前歯に形態異常が生じることがあります。ハッチンソン歯は、上顎中切歯にくさび状の切れ込みが入る特徴的な形態をしており、上顎側切歯や犬歯にも見られることがあります。また、歯の幅が正常な歯と比べて小さかったり、位置異常を伴うこともあります。先天梅毒による症状は歯だけではなく、目や耳など全身的に現れることが知られています。
その他
①先天性歯
出生時〜出生後1か月以内に萌出する歯を先天性歯といいます。下顎前歯部に生えることが多く、そのほとんどが自然に抜けてしまいますが、哺乳に支障があったり舌を傷つけて潰瘍ができてしまったりなど、日常生活に問題があれば抜歯が必要です。先天性歯は同じ部分に乳歯が生えてこない場合と、後から正常な乳歯が生えてくる場合とがあります。
②口唇口蓋裂
顔面の形態は、胎児がお腹の中で成長するときに、いくつかの突起が癒合することでつくられています。しかし、癒合が正常に行われないと、裂け目が残ってしまうことがあります。その結果、唇が割れた口唇裂や口蓋が割れて口腔と鼻腔がつながっている口蓋裂が起こります。比較的日本人に多い先天異常で、発生する確率は約500人に1人の割合ともいわれています。
③舌小帯異常
舌の裏側にある舌小帯が、通常より太く短いことがあります。そうすると舌の運動範囲が制限され、舌を上げたり前に出すことが難しくなり、発音や哺乳、咀嚼などに障害をきたすことがあります。
歯の異常によって生じるリスクと治療法
歯の本数や形の異常は、それ自体に大きな問題はなくとも、歯並びの悪さや噛み合わせの不具合を引き起こしやすくなってしまいます。また、そのままにしておくことで虫歯や歯周病リスクが高くなる可能性もあります。
例えば、癒合歯の場合には、後に生えてくる永久歯がない確率が高く、全体的な噛み合わせについて、矯正治療なども視野に入れて考えることが必要となります。過剰歯がある場合は、歯並びの悪化や歯肉炎、嚢胞などを引き起こすことがあります。嚢胞が大きくなると、永久歯の根を溶かしたり細菌感染したりすることもあります。
先天性欠如歯の治療法としては、ブリッジや入れ歯、他の歯を削らずに治すことのできるインプラント治療などがあります。過剰歯の治療法は主に抜歯ですが、症状によっては矯正治療も必要となります。過剰歯の位置や向きによっても抜歯のタイミングと方法が異なりますので、自己判断せずに歯科医師に相談してみてください。
歯の形態異常やエナメル質形成不全などは、適切な治療を行うことで、今後のリスクを減らせる可能性が高くなります。
最後に
歯の異常は上記に挙げたもの以外にも色々なものが存在します。もし歯の異常が見つかった場合、多くは病気ではないため過度な心配はいりません。 しかし、今後のリスクを減らすためにも早めの診察と歯科医師に治療の必要性の診断をしてもらうことが大切です。ターナーの歯など原因がはっきりしていて、早期治療によって今後のトラブルを防ぐことができるものもあります。
もし、ご自身のお口やお子さまのお口でご不安なことがございましたら、お気軽にご相談してください。歯科医院で定期検診を受け、適切な予防・治療を行うことで健康を維持していきましょう。
西宮北口ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科で皆様のご来院をお待ちしております。